不動産売買契約を締結する前に買主が説明を受ける重要事項説明書の役割と宅地建物取引業者の説明義務について解説します。(2020年12月)

重要事項説明の役割と宅建業者の義務

重要事項説明とは、不動産取引により物件を取得しようとする者が、契約をするか否かについて適切な判断や意思決定をすることができるよう、あらかじめ取引物件や取引条件などに関する重要な情報を正確、的確に提供することが目的となっています。つまり、重要事項説明は取引の安全を確保する上でとても大切なものなのです。

そのため、重要事項説明については、宅地建物取引業法第35条にて説明すべき重要事項が定められていますが、同条に規定する説明事項はあくまでも必要最低限のものであることから、それ以外にも住宅の購入を検討している方の意思決定に重大な影響を与える事項については、告知(説明)する義務がを宅地建物取引業者は負っています。

宅建業者が負う説明義務のイメージ

宅建業者が負う説明義務

宅建業法第35条に定める重要事項

宅地建物取引業法第35条では説明すべき重要事項を規定していますが、重要事項説明書については統一された様式がありません。
実務では、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」にある標準様式などを参考に、さまざまな様式の重要事項説明書が使用されているのが実情です。

取引物件に関する重要事項

取引物件に関する事項

区分所有建物における追加事項

区分所有建物における追加事項

取引条件に関する重要事項

取引条件に関する事項

上記の他、宅地建物取引業法第35条では、割賦販売の場合(2項)、宅建業者が自ら宅地建物を信託して当該信託受益権の売主となる場合(3項)についての説明事項が規定されています。

 

重要事項説明書の説明と交付時期

宅地建物取引業者は、取引の相手方に対し、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、重要事項説明書を交付して説明をさせる義務を負っています。これは、宅地建物取引業者が売主となる場合も含め、複数の宅建業者が取引に関わる場合は、すべての宅建業者が取引の相手方に対する説明義務を負うことになります。
実務では、一人の宅地建物取引士が代表して説明を行いますが、その説明に誤りがありトラブルが生じた場合、原則として、すべての宅地建物取引業者が連帯して責任を負うことになります。

重要事項説明書の説明をする相手方(宅地建物取引業者を含む)は契約者本人であり、不動産を取得しようとする者となりますが、手付や契約解除又は違約金等取引条件に係る事項は、売主となろうとする者にとっても重要な事項となるなどの趣旨から、売主となろうとする者に対しても重要事項の説明を行う場合があります。

重要事項説明書の説明方法

宅地建物取引士が説明をするときは、説明の相手方に対し、宅地建物取引士証を提示しなければなりません。国土交通省の「ガイドライン」によれば、提示の方法として、取引士証を胸に着用するなどにより相手方又は関係者に明確に示すよう定めています。
なお、提示に当たり、個人情報保護の観点から取引士証の住所欄にシールを貼ったうえで提示しても差し支えありませんが、シールは容易に剥がすことが可能なものとし、取引士証を汚損しないよう注意することが求められています。

宅建業者に対する説明の簡素化

宅地建物取引業者が宅地又は建物の取得者となる場合における重要事項説明については、その説明を要せず、宅地建物取引士が記名押印した書面を交付することで足りるものとされています。ただし、省略できるのは説明だけであり、宅地建物取引士が記名押印した重要事項説明書の交付義務は従来通りです。