建築基準法に定める道路の種類と、敷地に建物を建築しようとするときの影響などについて解説します。(2020年12月)

道路の種類とは

「道路の種類」という言葉から連想されるものとして、「公道」「私道」といった区別があると思いますが、これは、道路の権利関係(誰が道路の所有者か?)や管理者などを基準に区分したものになります。
これとは別に、その道路が接する敷地に建物を建築しようとするときの制限によって区分した道路の種類があります。それが、建築基準法に定める道路の種類です。

私たちが日常生活で使っている道路は、建築基準法上で見るとさまざまな種類に分類することができます。そして、分類された道路が「建築基準法(第42条)上の道路」に該当し、その道路に敷地が原則として2m以上接していなければ、敷地に建物を建築することができないのです(これを接道義務といいます)。

したがって、建築基準法に定める道路の種類とは、不動産売買をするにあたって、その敷地に建築物が建築できるかどうかにかかわる大きな問題であり、同時に売買価格などへも影響を及ぼす重要な問題なのです。

建築基準法上の道路(一部抜粋)

道路の種類(建築基準法第42条)
1項 幅員4m以上で以下のいずれかに該当するもの(特定行政庁が指定した区域では6m以上のもの)。
  1. 道路法による道路(国道、都道府県道、市区町村道などの公道)
  2. 都市計画法、土地区画整理法等によって築造された道路
  3. 建築基準法の集団規定施行(昭和25年11月23日、それ以降に都市計画区域に指定された地域ではその指定日)の際、すでに存在していた道路(公道・私道の別は問わない)
  4. 都市計画道路などで、2年以内にその事業が執行されるものとして特定行政庁が指定したもの
  5. 私人(一般の個人や法人)が築造した一定基準に適合する私道で、私道の所有者が特定行政庁からその位置の指定を受けたも(一般的に「位置指定道路」と呼ばれている)
2項 基準時(第1項第3号に同じ)現在、既に建築物が立ち並んでいた幅員4m未満の道路で、特定行政庁が指定したもの(公道・私道の別は問わない)。
特定行政庁により道路幅員が6mと指定されたものは6m未満で該当。
一般的に「2項道路」または「みなし道路」と呼ばれていまる。
3項 2項道路を指定するにあたり、将来にわたって拡幅が困難な場合で特定行政庁が指定したもの。
道路境界線が、道路の中心線から1.35m以上2m(3m)未満の位置に緩和される。がけ地等は2.7m以上4m(6m未満)。
4項 6m指定区域内にある下記の道路で特定行政庁が認めたもの。
  1. 避難・通行の安全上支障がない幅員4m以上6m未満の道路
  2. 地区計画等に適合した幅員4m以上6m未満の道路
  3. 6m区域指定時に、すでに存在する幅員6m未満の法42条適用道路
5項 6m区域指定時にすでに存在していた道路で幅員4m未満の道路。
6項 古い城下町などの民家が両側に立て込んだようなところで、幅員が1.8m未満の2項道路。

 

道路法による道路(建築基準法第42条1項1号道路)

道路法による道路とは、地方公共団体が管理する道路(いわゆる「公道」)のことで、国道・県道・市道・区道などを指します。
物件が公道に接している場合、①市(区)道名称・路線番号、②認定(管理)幅員があれば、その幅員、③道路台帳平面図(現況を図った図)、土地境界図(官民の財産境を確定した図)、公共用地管理区域図(道路の区域を確定した図)の写しを取得し、現地の道路と幅員などが一致しているかどうかの調査を行います。

なお、調査の結果、認定幅員と現地で測った現況幅員とが異なるなどの場合には、建物の建築にかかる制限の有無などを確認しておく必要があります。
例えば、認定幅員に対して現況幅員のほうが狭い場合、たとえ現況で4m以上の幅員があっても敷地後退を求められることがあります。

公共用地管理区域図の写しの例

公共用地管理区域図の写し

 

位置指定道路(建築基準法第42条1項5号道路)

位置指定道路とは、一定基準に適合する「私道」で、私道の所有者が特定行政庁(=役所です)からその位置の指定を受けたものを指します。
敷地が位置指定道路にのみ接道しているような土地を売買する場合、その道路を利用する上での制限や、通行料・維持管理費用などの負担金がかかる場合があるので確認が必要です。

特に、私道部分に複数の所有者がいる場合や、敷地の購入に際して私道部分の所有権が得られないような場合、私道の使用(通行など)や配管設備を敷設するのための掘削等に関しての承諾を私道所有者から得ておくことが、将来起こるかもしれないトラブルを回避するためのポイントとなります。

物件が位置指定道路に接している場合、市町村役場の建築指導課などで対象となる道路の「道路位置指定申請図」を取得して、現地の道路と位置や形状、幅員などが一致しているかどうかを調査します。

位置指定申請図に記載された内容と現地の道路が一致しない状況で建物を建築しようとする場合、その道路に接する関係者全員による復元(幅員、延長、隅切りの長さ、敷地接道部分の長さ、自動車転回広場などを一致させること)協議を行った上で、協議書等の必要書類を特定行政庁へ提出するなどの手続きが必要になります(実際の復元方法については、特定行政庁との協議により決定されます)。

道路位置指定申請図の例

道路位置指定申請図

 

2項道路・みなし道路(建築基準法第42条2項道路)

2項道路とは、公道・私道の別を問わず、建築基準法の施行の際(S25.11.23.、ただしその日以降に都市計画区域に指定されたときはその日)、すでに建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道で、特定行政庁の指定を受けたものを指します。

2項道路の接する敷地では、道路の中心線から2m(指定区域では原則3m)後退(これを「セットバック」といいます)したところが道路と敷地の境界線とみなされるため、建築物を建築しようとする場合、セットバック部分を除いた敷地に建物等を建築しなければなりません。また、セットバック部分は建蔽率(けんぺいりつ)や容積率の計算に用いる敷地面積に含めることができませんので、建替えをしようとする場合、従前の建物と同規模のものが建築できないこともあります。

敷地が2項道路に接している場合、セットバックが必要かどうかや、必要な場合の道路中心線の位置と道路境界線の後退方法などについて調査をする必要があります。

道路中心線の位置は、必ずしも見た目の道路の中心が中心線であるとは限らず、①現況幅員の中心、②官民境界線を確定し、そのラインの中心、③役所が調査の上で判断したライン、など道路ごとに異なるので、地積測量図など他の資料とあわせて慎重に調査をすることが肝心です。

セットバックのイメージ

セットバック

 

道路種類の確認方法

敷地が接する道路が、建築基準法上、どの種類の道路に該当するのかは、市町村役場の建築指導課などに備えつけられている道路種別地図などで確認することができます。この地図では、道路がその種類別に色分けされていて、色が指定されていない道は、建築基準法上の道路に該当しないものになります。

道路種別地図のイメージ

道路種別地図